Оsaka・G20と反グローバリズム世界革命
2016年10月、超大国アメリカで、反グローバリズムの巨大な中心・トランプ大統領が誕生しました。それにより、世界史の流れは大きく転換しました。
永田正治(Masaharu Nagata)
● グローバリズム体制は凋落期を迎えた
28日から開催される、大阪G20は、香港で「逃亡犯条例」の改正に反対する大規模デモが行われている情勢で開催されます。20カ国首脳のなかで最も居心地の悪い人物は中国の周近平主席にちがいありません。反対に、最も、意気揚々とした気持ちで日本に来るのは、外交で成果を上げている、アメリカのトランプ大統領でしょう。
米・中は、激しい貿易戦争を繰り広げ、中国経済は急速に弱体化し、周主席は、香港問題と貿易問題という重い二重苦を負います。中国経済の不振は、中国と強い経済関係をむすぶドイツを直撃します。ドイツと中国は、グローバリズムを推進する、西洋と東洋の二大国家です。
反グローバリズムの立場から見るとき、大阪G20は、グローバリズムと反グローバリズムのパワーが交差する画期的首脳会議になりそうです。グローバリズムが凋落し、反グローバリズムが力強く勃興する歴史的転換点です。
わずか、2年半前、トランプ大統領当選まで、反グローバリズムの勃興など、少数者の、幻のような、遠い期待でした。トランプ大統領の登場で、世界の流れは一変しました。世界の歴史に、こんな革命があったでしょうか。少数の変革を望む人々が絶望的戦いをしていたら、ある一人の指導者の登場によって、世界の動きが逆転し、一挙に展望が開けました。そして、今や、反グローバリストの人々は強い自信と希望を抱いています。
しかし、また、あまりに急激な変化なので、圧倒的多数の人々は、この変化の意味がさっぱり分かりません。おおくの官僚から学者、一般人まで、世界で反グローバリズムの変革が急速に進んでいることにまだ気づいていないのです。というより、今でも人々はグローバリズムがいいものだと信じています。
2014年に、中野剛志氏はこう指摘しました。「グローバル資本主義・新自由主義は、社会格差を広げ、社会のあり方を崩壊させ、国家の自律性も失わせ、経済成長すらも実現しない。しかも、絶えず危機が続く。しかし、これほど問題だらけで、理論的にも空疎なしろものを、アメリカ、ヨーロッパ、そして、日本のエリートたちも支持し続けています」(『グローバリズムが世界を滅ぼす』文芸春秋)。残念ながら、中野氏の5年前の指摘は、現在もあてはまるのです。しかし、おそらく、この状態が音を立てて崩れる時は目前に迫っています。
反グローバリズム革命の拡大は、少数者から、一気に世界最強国家のトップ、そして、各階層に広がっています。そのあり方を、G20を構成する諸国家の動向から見てみましょう。
◎ 国家の方向性、あるいは指導者が反グローバリズムに立っている国家
ロシア (プーチン大統領)
イギリス (EU離脱)
ブラジル (2018年10月、反グローバリズムを標榜するボルソラノ大統領当選)
オーストラリア (今年の4月、反グローバリズムを標榜するスコット・モリソン首相の総選挙勝利)
◎ トランプ大統領と思想を同じくする指導者、また、将来反グローバリズムに立つ可能
性が高い国家
日本 (安倍首相がトランプ大統領と極めて良好な関係を維持)
アルゼンチン (南米は反グローバリズム的な傾向をもち、ブラジルに続く可能性が高い)
フランス (5月のEU総選挙で反グローバリズムのルペン氏率いる「国民戦線」が勝利。EU総選挙の結果は今後の政治動向に大きな影響をおよぼす)
イタリア (EU総選挙で反グローバリズムのサルヴィーニ氏率いる「同盟」が勝利)
トルコ (EU加盟を目指す政策を放棄し、独自の路線を選択し、反グローバリズムに立つ可能性が大)
◎ グローバリズム体制を維持する国家、国家連合
(反グローバリズムの視点からはこの国家群が最大の問題国)
ドイツ (EUを支える強大国)
中国 (グローバリストによって立てられ発展した国家)
◎ 中間的立場の国家(しかし、反グローバリズムの方向に向かうと思われる)
カナダ
メキシコ
インド
● EUは解体に向かうか?
反グローバリズムの観点からG20の国家構成をみると、もはや、反グローバリズムの優勢は明らかです。次に、反グローバリズムの目指すものは、世界最大のグローバル国家連合であるEUの解体です。EUの現状を、反グローバリズムの代表的知識人エマニュエル・トッド氏の『ドイツ帝国が世界を破滅させる』 (文芸春秋.2015)から整理してみましょう。
トッド氏によれば、ドイツは、事実上、EUを足場に、全ヨーロッパに君臨するドイツ帝国をつくり上げたとします。まさに、ヒットラーが戦争で果たせなかったことを、現代のドイツは経済力で成し遂げたのです。
これは、国境を越えて「ヒト」、「モノ」、「カネ」が自由、大量に行きかうシステムでは、最強の者が一人勝ちし、多数者が隷属することになるグローバリズムの現実が如実に表れたものです。下に提示した国家群一覧は、トッド氏が、2015年における、ヨーロッパのドイツの覇権構造を図で示したものを、分類したものです。ここでは実態を明確にするため「ドイツ帝国」という用語を使います。
◎ ドイツ帝国圏といえる国家群
ドイツ
ベルギー
オランダ
スイス
◎ ドイツ帝国に自主的に隷属する国家
フランス
◎ ロシア嫌いのドイツ帝国の衛星国
スウェ―デン
◎ 事実上のドイツ帝国の被支配国家
スペイン
◎ドイツ帝国に合併途上の国家
◎ ドイツ帝国から離脱途上の国家
イギリス
● かつてなかった面白い時代
そもそもEU(欧州連合)結成の影の推進者はバチカンでした。1990年に、ドイツが統一され、統一ドイツの巨大な国力を怖れた、超国家的宗教であるバチカン・カトリックが、ドイツを一つのグローバル組織に加え、縛りつけるために、強力に推進したものです。そこには、旧東ドイツ地域にはプロテスタン住民が多く、統一ドイツはプロテスタントの比重が大きくなるという危惧もありました。結局、ドイツは積極的にEU結成を推進しました。しかし、東ドイツのプロテスタント牧師の娘であるメルケル首相の時代に、ドイツはEUの主導権を握りました。実に、アイロニーに富んだ展開です。
しかし、2016年には、イギリス国民がEU離脱を選択しました。5月にEU議会選挙が行われましたが、 フランスでは、反グローバリズムに立つルペン氏が率いる「国民戦線」が勝利し、第一党になり、イタリア では、やはり、反グローバリズムのサルヴィーニ氏の「同盟」が大きく躍進しました。EU議会選挙の結果は、後の各国の選挙に強く影響をおよぼします。フランスとイタリアで、反グローバリズム政党が、この余勢を駆って国内選挙で勝利すれば、この二大国は、イギリスの後を追いEUを離脱します。その時、EUは解体し、終焉を迎えます。
グローバリズムをめぐる状況で、興味深いのは、世界ではこのように急速に反グローバリズムの動きが進展しているにもかかわらず、いまだに圧倒的多数の人々が、グローバリズムを常識のように良いものだと思っていることです。
反グローバリズムの立場で、ワシントンを拠点に評論活動をしている伊藤貫氏は、今の時代は、「かつてなかった面白い時代」と言いました。伊藤氏だけでなく、反グローバリズムの人々はよくそう言い、この思いは共通認識です。圧倒的多数の人々はこの世界の大潮流を知らず。極少数の自分たちが、知ってしまっている。それが不思議で、面白いのです。
しかし、反グローバリズムに立つ私たちは安心することはできません。この流れを妨げようとするグローバリストが存在するからです。彼らはこの世界を「金」と「情報操作」で支配しています。日本の政界、財界、マスコミはグローバリストの巣窟です。彼らの力は巨大です。ですから、今でも「反グローバリズム」の論調は、禁句のようにメディアには登場できません。オールドメディアで流されるのはグローバリズムを主張するものばかりです。
反グローバリズムに目覚めた私たちは、グローバリズムの弊害を人々に訴え、隣人に伝える使命を持ちます。各国がしっかりした主権意識をもち、一握りのスーパーリッチの支配をくつがえし、伝統的精神と伝統文化を大事にし、他国のそれを尊重し、そのうえで、平等で、真にインターナショナルな関係を深める世界を築かなければなりません。私たちには大きな歴史の流れが共にあります。
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