サンクチュアリ通信BLOG 平和戦略

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21世紀の奇跡・トランプ福音主義大統領とBrexit(イギリスのEU離脱)

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日本は反グローバリズムに舵を切れ!

島嶼独立国家・日本 -グローバリズムと戦う日本文明論-1》


永田正治 (Masaharu Nagata )

 

●はじめに

アメリカとイギリスは世界をグローバリズムに巻き込んだ二大国家です。なんと、その二カ国から、トランプ革命とBrexitという、強力な反グローバリズム運動が開始されました。これは世界史的大革命です。21世紀人類文明の運命はこの動きによって左右され、今日、世界平和戦略の最重要テーマは、反グローバリズム革命のゆくえなのです。

 

 

世界文明はグローバリズムからナショナリズム

世界の新潮流である、グローバリズムの終焉とナショナリズムの台頭は、政治、経済に止まらない文明現象というべきです。この文明転換は凄まじい勢いで進行しています。すでに、グローバリズムの限界は、1997年のアジア金融危機、そして2008年のリーマンショックで噴き出していました。当時、事態の原因を見抜いた人々は、強欲なグローバル金融資本が、人間の経済をメチャクチャにしていると警告しました。この混乱で、いったい、どのくらいの中小企業が破綻し、労働者の家族が路頭に迷い、経営者が自殺に追い込まれたでしょうか。グローバリストはこんな悲劇は、毛ほども眼中にありません。

 


2013年の11月、ローマ法王が、新自由主義経済がもたらす格差拡大、民主主義の危機、エリートの無責任を批判しました。2012年末から、日本における反グローバリズムの第一人者である馬渕睦夫が活動を本格化し、2014年には、エマニュエル・トッド氏と5人の学者の共著グローバリズムが世界を滅ぼす』が世に出、2015年には、トッド氏の、反EU、反グローバリズムの話題作、『〈ドイツ帝国〉が世界を破綻させる‐日本人への警告-』が注目を浴び、ようやく、日本人のグローバル経済に対する信頼も揺らぎ出しました。

 


そして奇跡の2016年を迎えます。6月23日、イギリス国民がEUからの離脱を選択し、11月8日、アメリカ国民は、ドナルド・トランプ氏を45代大統領に選出しました。驚くべきことに、世界をグローバリズムに引き入れた二大国家から、反グローバリズムの強力な動きが開始されたのです。それに対し、グローバリストはイギリスのEU離脱を阻止しようとし、トランプ大統領をロシアンゲートなどで引きずり下ろそうとしました。21世紀は、反グローバリストとグローバリストの対立が世界の運命を決する時代になりました。



日本は反グローバリズムに舵を切れ

日本は、反グローバリズムの潮流に率先して加わり、先駆的役割を果たすべきです。なぜなら、日本にとってこの文明の転換は、かつてなかった幸運なのです。日本文明が、「孤立」から、「世界の主流」に立つことができるからです。



文明の衝突の著者サミュエル・ハンチントン氏は、日本は「家族をもたない文明」であり、「危機に見舞われた場合、日本に文化的なアイデンティティを感じるという理由で、他の国が結集して支援してくれることを当てにできない国家」と指摘しました。アメリカはキリスト教文明で、ヨーロッパと繋がっています。韓国は、中華文明で中国と繋がっています。しかし日本は、日本文明という単一文明で、文明的に孤立しているとみます。これは驚くに足りません、堺屋太一氏も、日本がヨーロッパ・キリスト教文化圏とも東亜中華文化圏とも異なる「第五の文化亜大陸」であると論じ、司馬遼太郎氏は、日本がアジア的な原理で動いてきたことのない国であり、「初めから脱亜している国」であると断じました。



ですから「脱亜入欧」という言葉が成立します。脱亜という文明的挑戦は、日本が、アジアの停滞から抜け出し、発展させる力になりました。しかし、西洋諸国は日本を西洋文明の一員とは受け入れません。ですから、世界における、日本人の文明的アイデンティー確立は困難をともないました。西洋文明にもアジア文明にも属さない日本人は、文明的に自信をもって立つ場所がなかったのです。例えば、しっかりアジア文明に属するインド人や中国人、韓国人はアジア人としての自分たちを主張します。



しかし、世界の新潮流である反グローバリズムは、文明圏を問題にしません。反グローバリズムは、国家の独立性、国家主権を重視する思想です。同一文明圏の国家が集まって共同体をつくるものではなく、国家主権のうえにグローバル組織体が君臨するものでもありません。EUはキリスト教文明圏の共同体ですが、反グローバリズムはEUのような枠組みは認めません。鳩山由紀夫元首相が提唱した、東アジア共同体というグローバル組織も論外です。



すなわち、来るべき反グローバルリズムの世界は、文明圏の帰属を問わず、「国家の独立を尊重する文明」です。日本は、歴史的に、巨大文明である中華帝国に従属しなかった「島嶼独立国家」であり、その文明的立場が、反グローバリズムが目指す文明的立場と一致するのです。21世紀は日本に積極的役割を求める反グローバル文明が開かれようとしています。



なぜ、グローバリズムがいけないのか

「人・物・金」が、国境を越えてダイナミックに移動するグローバル経済は、人々を豊かにすると思われてきました。常識のように、新自由主義に基づく、グローバル市場、グローバル経済は、世界経済の発展に多大な貢献をすると信じられてきました。トランプ大統領登場まで、反グローバリズムなど、変わり者の異端説ぐらいにしか受け止められませんでした。



しかし、グローバル経済が進展し、今日の状況をみると、豊かになるどころか、貧富の格差が拡大し、多くの人々は貧しくなりました。今、日本は、非正規雇用者が4割を越え、国民の7人に1人が貧困にあえいでいます。これは数字に表れない部分でもっと実感できます。明らかに、国民は、公務員など安定した職場の人々と、もっと多数の、不安定な職場で低賃金で働かなければならない人々に、二分しました。多くの人々は、豊かさを体感できず、消費は増えず、慢性的デフレ経済に陥っています。また、世界の上位1%の富裕層が83%の富を独占する不均衡と、80人あまりのスーパーリッチが、途方もない富で、世界経済と政治まで左右する異常な状態。今や、それを多くの人が認識しています。



問題は、グローバル経済を動かす人々の「動機」です。それは富の創造、金儲けです。それも凄まじい強欲が肯定される世界で、強欲でなければ生き残れません。後進国家群から、安い商品と労働者を受け入れる流れが続いています。これで富むのは経営者だけです。先進国に押し寄せる安価な商品と労働力は、多くの人々の仕事を奪い、賃金を減らし、貧困をもたらしました。それが先進国アメリカでトランプ革命が起こった理由なのです。



また、グローバル経済は激しい競争をよびます。人々は、貧しくなる一方、苛酷な競争に勝ち抜かなければならず、労働はつらいものになります。日本人は従順で勤勉なので、忍耐していますが、競争について行けない人が増え、中年層の引きこもりが深刻化しています。



一方で、グローバル化とともに、外国人が増え、社会は不調和なモザイクのような分裂が起きています。外国人がゆるやかに増えるのは望ましいですが、急激に増加すれば深刻な問題になります。それはヨーロッパの現状が如実に示します。昨年12月の改正入管法で、5年間に35万人あまりの外国人労働者を受け入れますが、これは、日本社会の分裂を加速させます。まず、いま居住する外国人としっかり馴染み、ゆるやかに新しい外国人を受け入れる方針に転換すべきです。 



奇跡の大逆転

過去、グローバリゼーションは二度ありました。第1次グローバリゼーションは、イギリスを中心とし1870年代から始まり、結局、1914年の第一次世界大戦と、1929年の世界恐慌という悲劇で終焉しました。第2次グローバリゼーションは、アメリカ、イギリスを中心とし、1980年代から本格化し、現在に至ります。経済史専門家のH・ジェームス氏は「第一期のグローバリゼーションの時代と現代との統計的な比較を試みた経済学者は、たいていその相似性に驚く」と述べました。すなわち、今、私たちが住む世界は、過去、大戦争を引き起こした経済状況が再現している、極めて危険な時代なのです。



第2次グローバリゼーションの特徴は、様々に問題点が論じられ、人々に自覚され、その原因も特定されていることです。グローバリズムを推進しているのがグローバリストであり、その由来と影響も理解されています。世界の基軸通貨であるドルを発行しているFRB(Federal Reserve Board・連邦準備制度理事会)が、アメリカ政府の機関でなく、グローバリストの銀行家の機関であり、彼らがドルの発行権を掌握していること。覇権国家であるアメリカは、グローバリスト・ウォール街の「ディープステート」が、金の力で政治を動かし、そこに、グローバル巨大企業群が連なります。彼らこそ、世界を動かす真の勢力なのです。これらは、長く隠されてきましたが、今や、多くの人々が知るところとなりました。



このグローバリストの凄まじい力は、『聖書』の黙示録13章にある「だれが、この獣に匹敵し得ようか。だれが、これと戦うことができようか」と描かれる悪魔の獣のように圧倒的と思われました。しかし、2016年、アメリカのトランプ・福音主義大統領の登場と、Brexit(イギリスのEU離脱)で、形勢は一挙に逆転しました。これは、1985年にソビエト連邦ゴルバチョフ書記長が誕生したことと似ています。4年後の1989年にベルリンの壁が崩壊し、7年後の1991年にソ連が崩壊しました。今後、グローバリズム清算が行われ、社会主義の崩壊のような大激動の時代が現出しようとしています。これはまた、人類史上に数千年に一度の大きな文明史的大変革なのです。それを明らかにするのがこの論考の使命です。



世界史は、「グローバル帝国」の時代から「真の独立国家」の時代へ

歴史的に、文明圏は帝国により成立しました。帝国の力がなければ、高度文明を発展させるための広域の秩序が維持できなかったからです。ヨーロッパは、キリスト教のグローバル文明圏を形成しましたが、ローマ帝国フランク王国神聖ローマ帝国スペイン帝国など、強大な帝国が支配しました。近世以降、ヨーロッパは世界に拡大し、南北アメリカオセアニア、フィリピン、アフリカ地域にキリスト教文明圏を拡大しました。



イスラム教のグローバル文明圏は、中近東、アフリカ地域を基盤に、ウマイヤ朝アッバース朝、ファーチマ朝、セルジューク朝オスマン朝などのイスラム帝国が広域を支配しました。15世紀以降は、アジアを東進し、バングラディシュ、インドネシア、マレーシアまで、イスラム教文明圏を拡大しました。



中華帝国は、秦、漢、唐、宋、元、明、清などの王朝が、少数民族や周辺国を従わせ、漢字、儒教道教、仏教などを基にする中華文明を広げました。韓国は中国に従属し、中国文明圏に属する国家でした。しかし、日本は中華帝国に従属しない国家で、独立を堅持してきました。あのモンゴル帝国の元が侵攻してきた時も、勇敢な武士団が果敢に跳ねのけました。日本は、強大な中華帝国が近くにありながら、国家主権を維持した独立国家でした。これは、人類史に稀なことなのです。あのイギリスも、大英帝国を形成する以前は、長くローマ帝国やバイキングの国家に支配されたのです。



また、アメリカは、ヨーロッパの植民地から出発し、イギリスから独立した国家で、今日、世界の覇権を握る国家になりました。独立後は、ヨーロッパの抗争に巻き込まれるのを嫌い、他国の政治に不介入主義をとりました。この国は、強力な国家でありながら、ヨーロッパ列強のような帝国を目指さなかった、実に稀な大陸国家なのです。このようなアメリカは「大陸独立国家」ということができます。



隣国の韓国は、長く中華帝国に従属してきました。しかし、理解すべきは、韓国のあり方が世界のスタンダードなのです。世界の諸国家、諸民族は、自ら、帝国になるか、帝国に服従するかの道を歩んだのです。特に韓国は、多くの侵略を受け、大陸の弱肉強食の苛酷な運命にさらされた国家でした。モンゴルの侵略と豊臣秀吉の文禄慶長の役で甚大な被害を受けましたが、それは韓国が要衝にある国家だったからです。中華帝国が日本を攻めるとき、韓国は通過しなければならない要衝地で、反対に、日本が中国を攻めるとき、韓国は通過すべき要衝地になるのです。



今日、韓半島を中心とする、中国、ロシア、アメリカ、日本のパワーゲームも、基本的に同じ構造です。このような韓国を「半島要衝国家」と呼ぶことにします。長く韓国は、反共を国是とする、しっかりと自由主義陣営に帰属する国家でした。しかし、今、この国は、文在寅・共産政権が立ち、共産グローバリスト国家といえる北朝鮮と中国に飲み込まれようとしています。この論考では、島嶼独立国家・日本と、大陸独立国家・アメリカが堅く手を握り、半島要衝国家・韓国を正しい道に戻るように働きかけ、アジア太平洋地域の安全を確保する道を探ります。



世界の歴史は帝国が主役でした。第二次大戦後、諸国は独立し、国家主権が重んじられ、各国が自主的に国家運営をし、発展する時代になったと思いました。しかし、世界に帝国はなくなりましたが、実質的に世界を支配するのは、国家を越えて暗躍するグローバリストたちでした。見える帝国から見えない帝国に変わったのです。トランプ革命によって開かれようとする新しい時代は、かつての歴史になかった、グローバル帝国が支配しない、真実に独立した諸国家の時代です。21世紀の世界は、少数のグローバリストが金で世界を動かす、見えない帝国を打ち砕き、諸国がしっかりした国家主権を有し、共生、共栄のために融和し発展する、真にインターナショナルな世界を創らなければなりません。まさに、反グローバリズムの勃興は人類史的挑戦なのです。

 

 

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