サンクチュアリ通信BLOG 平和戦略

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宗教とUFО・宇宙人

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人類は宇宙の創成について共通見解を持つに至っていない。

 

 

永田正治(Masaharu Nagata)

  

●はじめに

今から3回、スピリチュアリティ―に関してお伝えします。スプリチュアリティーは、「広義の宗教」、あるいは「宗教的な文化」ということができます。現代文化はスピリチュアリティ―抜きに語れません。アニメのテーマなど、ほとんどスピリチュアリティーといえます。伝道していて、スピリチュアリティ―に関し話す必要に迫られることもあるでしょう。ここでは、私たち宗教者の立場から、スピリチュアリティ―をどう捉えればいいか論じます。まず、説明より、ずばり、具体的なテーマを紹介しましょう。UFO・宇宙人についてです。次回に、スピリチュアリティ―について説明します。



宗教的な宇宙人

 

 UFOや宇宙人と言えば、SF小説にあらわれる、未来科学的な仮想存在でした。ところが最近は、スピリチュアリティーや宗教の一部で、宇宙人が科学力とともに、強力な霊能力をもつ存在とみて、近未来に、人間と接触し、人類の科学と霊性が飛躍的に高まる時代が到来すると主張します。テレビでも、UFOと遭遇するために、呪文や祈祷をしますが、これは宇宙人が、人間の霊的、宗教的行為に反応する存在と想定していることを示します。



多くの宗教者は「霊」は実在するが、「宇宙人」は架空の存在と感じていると思います。論じるに足りないと即座に否定する人も少なくないでしょう。しかし、今日、UFO・宇宙人を肯定する傾向は無視できず、宗教者はそれについて考え、論じる必要があります。



そもそも、宗教にとってUFO・宇宙人というテーマは扱いにくいものです。宗教では高度な知性をもつ存在は限られます。キリスト教では「神・天使・人間」多神教では最高神・神々・人間」、仏教では「諸仏・諸神・人間」です。人間以外は肉体をもたない、目に見えない存在で、肉体をもち、高度な知性をもつ存在は想定しません。ながく宗教者にとって、UFO・宇宙人は想定外の存在です。



銀河帝国の興亡」や「アイ・ロボット」を書いた、ユダヤ系の生科学者でありSF小説の巨匠アイザック・アシモフは、「UFOなどを信じる人の気が知れない」と強く否定しました。「銀河帝国の興亡」は、遥かな未来、銀河系宇宙に高度な文明が無数に存在しますが、そこに住む「宇宙人」は、地球から移住した人々で、人間ならざる宇宙人の存在は想定しません。一方、スターウォーズやアニメのドラゴンボールなどは、人間ならざる宇宙人が登場します。昆虫や動物が進化して、高度な知的存在になったという想定です。



ふつう宗教は、人間と自然界から成るこの地球のあり方が、神の創造の「基本デザイン」と考えます。しかし、昆虫や動物が進化した、人間ならざる宇宙人が存在するならば、宇宙には私たちの世界と大きく異なる世界が存在することになり、地球のあり方が神の基本デザインとは言えなくなります。そのため、宗教者にとって、人間ならざる宇宙人の存在は想定しにくいものです。

 

 

宇宙・霊界・宗教

ビッグバーンから200億年という宇宙的時間からいえば、人類文明はわずか5000年あまりという「瞬間」です。すなわち、宇宙の途方もない時間のなかで、おなじ今の「瞬間」に、高度な文明をもつ生命体が存在し、人類がそれと出会うこと自体が、確率的に困難といえます。いたとしても、150億光年という天文学的な広さをもつ宇宙空間を飛行して地球に来ることが可能かという問題があります。秒速30万キロですすむ光が、一年で到達する距離が1光年です。その150億倍が宇宙の大きさです。ふたつの高度文明は、無限ともいえる宇宙的スケールの時間と空間のなかで、極小の接点で出会わなければならないのです。まさに「アマゾンにいるアリが、一分以内に北海道にいるアリに生きて会う」以上の困難さがあります。



この広大な距離を飛び越えるため、ワープという、空間のゆがみを利用して瞬間移動する宇宙航法を想定します。しかし、広大な宇宙空間を克服できたとしても、悠久の宇宙時間も克服できなければ、文明が出会うのは途方もなく困難なことです。



そのため、時空を超越した「霊界」、あるいは「四次元空間」を通過して、宇宙人が地球に到来するとしています。霊界や四次元空間は、時間と空間を超越した世界と考えられますから、論理的には可能です。



しかし、科学の力で時空を自由に超越できたら、そもそも時間と空間の制約のなかにある、この世界の存在意義とは何なのか。とくに時間の問題では、タイムマシーンで、過去や未来に行き、自分の過去や将来、世界の歴史や行く末を勝手に編集できたら、私たちの人生や人類の歴史の意味が失われてしまいます。



実はこれは哲学の議論の対象になってきた問題です。日本を代表する哲学者、西田幾多郎は、時間は不可逆だと言っています。時間は不可逆、不可超越で、「今」が、先端にある唯一の時間的世界であり、神、人間、自然界、全ての存在が、おなじ「今」という時間を共有しているのではないでしょうか。


エスや釈迦、孔子など多くの聖人も、時空を超越した存在だったわけではありません。時空の制約の中で生き、自分の未来すら明確に知ってはいませんでした。私たちとおなじ短い人生をあゆみ、そのなかで濃厚な愛と慈悲の実践をし、永遠に変わらない不変の真理を教えた人々です。



宗教は過去にポイントをおく

UFO・宇宙人を精神世界と結びつけて論じる姿勢は、既成宗教の枠を越えた、「未来志向」の宗教観と見ることもできます。しかし、宗教における「未来志向」は、過去の克服が前提になります。宗教は、この世が不完全であるかぎり、過去から引き継いだ、因果の宿命と戦うことに意味があり、苦しみの甘受、自己犠牲による罪の贖いなどが求められます。


三大聖人は皆、2000年以上前の人で、献身的、犠牲的人生をおくりました。宗教とは、過去の聖人の教えを大きな光源とし、現在に生きる私たちがその光を受けとめ、未来へ反射させるものです。宗教はまず、過去を踏まえなければなりません。宗教者が伝統を固く守り、過去を忘れないようにするのもそのためで、遠い過去に書かれた教典を学び、お坊さんは髪を剃り、袈裟を着ます。



宗教者にとって、科学と霊能をもつ宇宙人と交流し、宗教と世界の新しい時代が開かれるというのは、なかなか理解できない未来像です。むしろ、人間がおかした過去のあやまちと間違った価値観を、聖人の教えで悔い改めることによって、宗教と世界の新しい未来が開けると考えます。過去の問題を解決するのが宗教の大事な使命です。



「宇宙時代」へのコミュニケーション

いろいろ論じてきましたが、UFO・宇宙人問題は難しい議論です。人間は、いまだに死んで霊界に行くのか、輪廻するのかという問題すら結論を得ていません。自分の死後もはっきりしないのに、UFOや宇宙人のことが分かるはずがありません。UFO専門家である矢追純一氏も、UFO・宇宙人のあり方は、きわめて複雑で混乱していると指摘するように、この問題は簡単には結論づけられないものです。


宗教者の多くは、UFO・宇宙人は霊的存在ではないかと考えています。一方で、UFO現象は多くの人が目撃するとともに、UFO・宇宙人の実在を信じロマンを感じる人もたくさんいます。



今日、宇宙開発はすすみ、人類は宇宙に進出し、いつかは「宇宙時代」が到来します。アシモフが想定したように、未来の宇宙には、人間が移り住み人類文明を拡大するのか、それとも、人間ならざる宇宙人と遭遇し、彼らの文明と共存するのか、という二つの未来図を描くことができます。こんな「宇宙時代」の様相について様々に議論するのは面白いことです。



「UFO・宇宙人否定派」は、肯定説を荒唐無稽と感じ、「肯定派」は、否定説を頭が固いと感じるでしょう。認識は食い違いますが、双方が相手をバカにしないで真摯に議論すべきです。そうすれば、新しい、良いものが生まれてきます。とくに、宇宙的スケールの世界観をもつ、「法華経」を学ぶ宗教者は独自の見解があると思います。UFO・宇宙人問題は、「輪廻か霊界か?」のように、異宗教コミュニケーションで自由に語り合うことができる興味深いテーマです。 

 

 

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