サンクチュアリ通信BLOG 平和戦略

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宗教者の苦悩とスピリチュアリティ―

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宗教とスピリチャリティーは異母兄弟

 

永田正治(Masaharu Nagata)

 

●はじめに

宗教者にとって、スピリチュアリティ―は理解が難しい。しかしそれは、異母兄弟のような関係なのです。今回はその解説を試みます。

 

 

宗教意識の変化

私たちは、地球がまるいことを知り、太陽系に属し、更に150億光年という大きさの宇宙空間が広がっていることを知っています。気象変化や地震発生のメカニズムを知り、細菌やウイルスが病気を引き起こすことも知っています。

 

 

しかし、科学が発展する前の人々は、そんなことは知りませんでした。そのため、世界を神話的、宗教的に理解するしかなかったのです。一神教圏の人々は、世界は神が創造したと信じ、アニミズム宗教圏では、自然に神が宿っていると信じました。天変地異は神の怒り、病気は悪鬼の仕業と考えたのです。福の神、怨霊、そして魔女は架空の存在ではありませんでした。昔の人は、現代人には想像できないほど宗教的だったのです。その素朴な宗教心は、高度な教えをもつ世界宗教により、大きな信仰集団としてまとめ上げられました。

 

 

ところが、科学の発展のおかげで、生活の安楽や医学の進歩という大きな恩恵を受けるようになると、人々は科学を崇拝し、素朴な信仰心は非科学的なものとして排斥するようになりました。思想的には世俗主義と、宗教をアヘンとする共産主義が広がり、人々の宗教離れが進んだのです。宗教を考えるには、この、悠久の「宗教の時代」と、近代の「科学の時代」を踏まえなければなりません。

 

 

しかし、20世紀の70年代頃から、宗教には再び巨大な地殻変動が起きました。科学の限界と発展にともなう弊害が明らかになり、唯物的共産主義も後退し、人々の考えは次第に宗教回帰しはじめたのです。神や仏、死後の世界、輪廻転生、超自然現象を信じる人が増え、いまや「宗教」は、価値観の主流に戻りつつあるかのようです。

 

 

 

スピリチュアリティ―の台頭と教団宗教の悩み

問題は、人々の宗教心が復興しても、従来の「教団宗教」に戻ってきた訳ではないということです。現代人の「宗教」は、昔の「宗教」とかなり変わってしまいました。スピリチュアリティー、占い、ヨガ、瞑想法、宗教的なテレビ番組、映画、ゲーム、また、妖怪、都市伝説、ホラーなど、社会には「宗教的」なものがあふれています。

 

 

人々はこのような「スピリチュアリティ―・広義の宗教」を求めて、それで満足しているのです。単純に、「教団に入信することが宗教をもつこと」ではなくなりました。ここ数十年のあいだに「宗教」のあり方が劇的に多様化したのです。そして、宗教者は、それが何なのか判断できません。宗教者はこの新事態のなかで、社会における宗教の位置や意義を見失いました。その状況は、宗教者に、深刻なアイデンティティーの危機をもたらしていると言えます。

 

 

正体の知れない「宗教」が氾濫する現代は、唯物主義が強かった時よりも、むしろ伝道が難しい時代になりました。宗教者にとって、科学万能時代に宗教を主張するほうが、反宗教に立ち向かうという二極構図で、やり易かったのではないでしょうか。このように、現代社会は、「宗教とはなにか?」が難しいテーマになり、宗教の大混乱期にあるといっても過言ではありません。

 

 

「どこまでを宗教と捉えるか?」は人によって違います。教団宗教以外は宗教ではないという立場もあるでしょうし、宗教的なものを含んでいるものは、宗教のひとつと考えるべきという立場もあるでしょう。ともあれ私たちは、今までの宗教が経験したことのない、混沌とした宗教的環境のなかで生き、宣教しなければなりません。

 

 

 

科学と東洋思想の融合

意外にも、スピリチュアリティーの背景には、科学の発達があります。アインシュタインなど世界的な物理学者が、世界の本質は探れば探るほど、東洋哲学に近づくと言っています。

 

 

20世紀を代表する理論物理学者のひとりであるデヴィッド・ボームは、宇宙は目に見える宇宙(明在系)と、目に見えない宇宙(暗在系)からなり、暗在系宇宙は、素粒子が霧のような状態に渾然一体をなしており、そこには、「自他の区別がない」という仮説を立てました。スピリチュアルな理解では、明在系宇宙が、現世という自我を持って生きる仮の住まいで、この暗在系宇宙こそ、完全調和の、無我で生きる霊的世界だと考えることができます。

 

 

このように、現代科学はスピリチュアリティーを肯定する傾向があります。先進科学と東洋哲学は、「無」、「空」、「広大無辺な宇宙観」、「全ての存在はつながっている」などという世界観を共有し、互いに引きつけ合うものなのです。

 

 

このようにスピリチュアリティーは、科学的な成果と、仏教や老荘思想などの東洋思想をはじめ、キリスト教や、霊的な宇宙人に至るまで、様々な「宗教」を取り入れています。そして、排他性がなく、他と壁を置かないので、探究者は各種の書籍を自由に読み、ユニークな精神世界をつくっています。巨大なスピリチュアル・ワールドは、入口が多く、性格もさまざまで、系統で分類するのは容易ではありません。

 

 

あまりに多様なので混沌とした印象も受けますが、おおくに共通するファクターをとりあげ特徴をまとめて見ましょう。

 

 

① 現代はアセンションという霊的覚醒の時代に突入し、人々の魂が急速に進化している。

 

② 人類は、「宇宙の心」(神)とつながらなければならない。

 

③ 思いは現実化し、引き寄せの法則で、自分の心に合った周辺環境がつくられ、自分と似た心を持つ人が集う。

 

④ 偶然というものはなく、全ての出来事には何らかの意味があり、人は、偶然と思われることの背後にある、シンクロニシティ(共時性・同時性)に気づくことが重要。

 

⑤ エゴというネガティブな波動エネルギーを避けなければならない。

 

⑥ 宇宙の霊的エネルギーを受容し、明るく積極的な思考を持つべき、などです。

 

現代が宇宙史のなかで特別な時代というのは、多くの宗教もおなじです。スピリチュアリティーは、一刻も早く人々が、宇宙精神(神)が、ご自身の理想実現に向け世界を導いていることに気づき、新時代の到来に合わせ霊性を高めなければならないという、未来志向的な終末思想をもちます。

 

 

宗教とスピリチュアリティーは「異母兄弟」

スピリチュアリティーの主張は、ニュアンスの差はあっても教団宗教と重なります。しかし、宗教間対話のような、教団宗教とスピリチュアリティーの交流はありません。両者には大きな違いがあるからです。

 

 

それは「指導者」のあり方がちがうのです。教団宗教の教祖は、教えを説き、弟子を導いて、必ず、「信仰共同体」の形成を目指します。教祖の教えは教団の教義、指針となり、死後には生前より篤い崇拝を受けるのです。

 

 

一方、スピリチュアリティーの提唱者は、ひとりの啓蒙者、霊能者で、教団は創設せず多くの人を組織することはありません。しかし反対に、教団を越えた、「大衆的影響力」を持つことができます。

 

 

教団宗教は、経典を学ぶこと、信仰をともにする教友と交わることが重要です。また、大衆に発信することよりも、外には伝道、内には信仰教育を行い、信仰が子孫に継承されることを重んじます。教団宗教は、「数千年もつづく精神的共同体の形成」をめざし、スピリチュアリティーは、「現代における精神的啓蒙」をめざすものです。

 

 

すなわち両者は、「父である宇宙精神」は同一の存在で、おなじ目的をもちますが、「母である提唱者」が、教祖か啓蒙者かという決定的違いがあり、主張の伝播方法も異なるのです。

 

 

わたしたち教団宗教が、大衆的発信力を高めるには、スピリチュアリティーから学ばなければなりません。それには、宗教者がスピリチュアリティーの人々と交わり、「宗教」を越え、スピリチュアリティーをふくめた「精神世界」にまで関心を広げることが求められます。「異母兄弟」のように似ている両者は、人を幸福にするという本来の目的を達成するため、交流、協力を進めるべきです。

 

 

 

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